「定期借家契約ってどんな契約?」「定期借家契約にする意味は?」など、定期借家契約について気になっていませんか?
定期借家契約は、契約期間を限定した更新ができない契約で、オーナー(賃貸人)にメリットが多い反面、契約者(賃借人)にはデメリットが多いので注意が必要です。
このページでは、長年不動産仲介の営業として働いてきた筆者が、定期借家契約について下記の流れで解説していきます。
すべて読めば、定期借家契約のメリット・デメリットから、契約するまえに確認すべき点まで知ることができるので、契約形態で悩まずに正しい選択ができるでしょう。
1. 定期借家契約とはなにか
定期借家契約は、契約期間を限定した更新することができない契約形態として2000年に導入された制度で、正しくは「定期借家制度」といいます。
導入された経緯は、オーナーが所有物件を賃貸に出しやすくするためです。つまり、物件オーナーのための制度ともいえます。
この章では、定期借家契約の特徴を詳しく解説していきます。
1-1. 期間満了で契約が一旦終了する
仮に「定期借家契約2年」の条件で契約した場合、2年後に契約が一旦終了します。
従来の「普通借家契約」であれば、2年後に更新することで契約を継続できますが、定期借家契約は確定的に終了します。
また、契約期間の設定に関しては、数ヶ月間と短くてもいいですし、10年間と長期にすることもオーナーの自由です。
なぜ定期借家契約にするのか
定期借家契約のほうが、オーナーは物件の管理や運用がしやすいからです。
極端な話、近隣トラブルを起こすような入居者であっても、定期借家契約であれば契約が終了することで自動的に退去してくれます。
これが普通借家契約だと、入居者は法律上、有利な立場なので、追い出したくても簡単には追い出せません。
そのため、定期借家契約はオーナーにとって理想の契約方法となるのです。もちろん別の理由もありますので、ひとつのイメージとしてお考えください。
1-2. 中途解約は原則不可
定期借家契約の場合、契約期間中の中途解約は原則不可となっています。
ただし、下記の条件に該当すれば中途解約できると認められています。
- 床面積200㎡未満の居住用建物でやむを得ない事情がある
- 契約書に中途解約を認める特約が定められている
床面積200㎡未満の居住用建物でやむを得ない事情がある
まずは200㎡未満の「居住用建物」ということが第一条件なので、事務所やテナント物件は該当しません。
そして、やむを得ない事情というのは、契約者の「転勤・療養・親族の介護等」です。これは法律で定められているので、虚偽の申告による解約は違法となります。
また、やむを得ない事情で解約するときは、申請から「1ヶ月後」に契約が終了します。このとき、解約できるのが「2ヶ月後や3ヶ月後」となってる契約条件は無効となります。
契約書に中途解約を認める特約が定められている
居住用の賃貸物件は、契約書で中途解約を認める特約を定めていることが多いです。
この場合は「普通借家契約」と同じく、解約する「1~2ヶ月前」に希望することで中途解約できる特約が一般的です。
一方で、テナント物件が特約を定めることは少ないです。3年の契約であれば3年間は借り続ける必要があるので、リスクは大きくなります。
1-3. 契約を続けるには再契約が必要
定期借家契約は、更新や中途解約ができない契約ですが、オーナーと契約者の双方で合意があれば、更新ではなく「再契約」することで契約を継続できます。
なぜ再契約かというと、上述したとおり契約が一旦終了するからです。そのため、更新ではなく再契約となるのです。
また「家賃1ヶ月分程度」の再契約料を支払うことで再契約できますが、物件によっては契約時の初期費用を再度請求されるケースもあるので、事前の確認が必要です。
再契約できないケースもある
繰り返しになりますが、再契約するにはオーナーと契約者の双方で合意が必要です。
契約者が再契約を希望しても、オーナーが拒否すれば退去するしかありません。この点はオーナーの意向が絶対条件となります。
ただ、契約期間が1年以上の物件で、オーナーから再契約しないと申し出るときは、契約満了日の1年前から6ヶ月前に契約者へ伝える義務があります。
なので、いきなり「来月で契約は終了です」というようなことにはなりません。
ここまでのまとめ.
ここまでをまとめると、定期借家契約は契約者にとってリスクやデメリットがある契約形態といえます。
極端な話、オーナーから「2年後は再契約できますよ」と言われ安心して契約しても、1年後に「再契約しない」と言ってくる可能性もあります。
コロナウイルスのように、誰でも生活状況が一変することもあり得るので、定期借家契約の物件は慎重に検討することが望ましいです。
オーナーにメリットが多い定期借家契約ですが、契約者にとってメリットはあるのか、次の章で解説していきます。
2. 契約者にとって定期借家契約のメリットはあるのか
基本的にオーナーのほうがメリットは多いですが、契約者には下記のようなメリットがあります。
それぞれの項目を詳しく解説していきます。
2-1. 相場より賃料や礼金が安いことが多い
定期借家契約は更新できないリスクの関係から入居希望者が集まりにくいので、相場より賃料を下げたり、礼金をなしにする物件が多いです。
なので、契約期間や再契約時の条件を確認して問題ないと判断できた物件であれば、ほかの物件よりお得に契約できるメリットがあります。
2-2. 契約期間が長いほど無駄な費用が不要になる
居住用の定期借家契約の物件は、契約期間が「3年」や「5年」など一般的な物件より長いことが多く、期間が長いほど無駄な費用が不要になります。
このときの無駄な費用とは、「更新料」や「再契約料」などの契約を継続するための費用です。
普通借家契約で多い2年契約だと、2年ごとに費用を払う必要がありますが、契約期間が3年や5年であれば費用を払う頻度が減るので、長く住めば住むほどお得になります。
家賃10万円の物件に「10年間」住んだときのケース
- 2年契約:支払い回数「5回」トータル「50万円」
- 3年契約:支払い回数「3回」トータル「30万円」
- 5年契約:支払い回数「2回」トータル「20万円」
上記は更新料・再契約料ともに「1ヶ月分」で計算しましたが、定期借家契約は「再契約料:0.5ヶ月分」の物件も多いです。
ただ、どの物件も「再契約料:0.5~1ヶ月分」というわけではなく、礼金や仲介手数料を請求されるケースもあるので、事前に確認することが大切です。
2-3. 希少な分譲住宅を借りることができる
定期借家契約であれば、賃貸に出回ることが少ない分譲住宅を借りることができます。
理由は、分譲住宅の多くが定期借家契約にして貸し出しているからです。
ただ、オーナーが部屋を使わない期間だけ賃貸に出してるケースが多いので、再契約できない可能性が高いという点に注意しましょう。
分譲住宅とは
分譲住宅は、オーナーが自身の居住目的に建てた、あるいは購入した、戸建てやマンションのことを指します。
一般的な賃貸物件の仕様にはない、グレードの高い住宅設備が揃っているのが特徴です。
2-4. 物件の審査が通りやすい
オーナーからすると、契約者になにか問題があれば再契約しなければいいだけなので、下記のような人でも物件の審査が通りやすいです。
- フリーター
- 個人事業主
- 水商売
- ひとり親世帯
- 高齢者
- 生活保護受給者
- 外国籍
あくまでも仮説ですが、契約期間を6ヶ月にすれば、オーナーは6ヶ月ごとに状況を確認して再契約するか・しないかを検討できます。
契約者としては問題を起こさずに生活することで、一般的な物件と変わらず長く住める可能性もあります。
なので、一般的な賃貸物件の審査が通らないという人は、定期借家契約の物件を検討してみましょう。
2-5. 賃料を一括前払いすることができる
オーナーとの合意が必要ですが、定期借家契約であれば賃料を一括前払いできる物件が多いため、経営者や個人事業主の人は節税にもつながります。
また、水商売の人などで「お金はあるけど審査に通らない」という人は、一括払いすることで滞納する恐れがなくなるので、入居を認められやすいです。
以上のように、人によって受けられるメリットは変わってきますが、契約者にとっては費用面のメリットが多いです。
次の章で、契約するまえに確認すべき点を解説するので、契約したあと後悔しないように必ず確認するようにしましょう。
3. 定期借家契約の物件を契約するまえに確認すべき4つのこと
定期借家契約は従来の賃貸契約より注意する点が多いので、契約するまえに必ず下記4つの点を確認するようにしましょう。
1章と重複する内容もありますが、とても重要なことなのでひとつずつ解説していきます。
3-1. 契約期間中の中途解約はできるか
定期借家契約は中途解約が原則不可となっているので、特約で中途解約が認められているか必ず確認しましょう。
居住用物件であれば一般的な賃貸契約と同様に「解約する1ヶ月前に連絡すること」という条件が定められているケースが多いです。
一方で、テナント物件や事務所の場合は、中途解約の特約が定められていないケースもあるので注意しましょう。
違約金の有無も確認する
特約で中途解約が認められていても、違約金が発生する条件になっているケースもあるので、あわせて確認するようにしましょう。
3-2. 再契約を前提とした定期借家契約か
再契約を前提とした定期借家契約かどうか、契約するまえに必ず確認するようにしましょう。
築の古い物件は取り壊しの可能性があり、分譲マンションはオーナーの転勤期間だけ、というケースも多いので注意が必要です。
ただ、仮に3年契約で再契約不可だったとしても、「3年後に引っ越せばいい」と思える人であれば問題ないでしょう。
3-3. 再契約するときの費用はいくら必要か
契約条件によっては、再契約時に礼金や仲介手数料を求められるケースもあるので、実際にいくら必要か確認するようにしましょう。
居住用物件であれば、更新するときと同じように「再契約料」を支払うことで再契約できるケースが多いです。
また、再契約料の相場としては、借りる物件によって下記のように変動します。
- 居住用物件「家賃:0.5~1ヶ月分」
- 事務所「家賃:1~2ヶ月」
- テナント「家賃:1~5ヶ月」
そして、再契約料とは別に「事務手数料」を求められるケースもあるので、トータルでかかる費用を把握しておきましょう。
3-4. 契約書とは別に書面が用意されているか
定期借家契約を結ぶときは、契約書とは別に「更新がなく期間満了により終了する」旨が記された書面を用意する必要があります。
そして、その書面を契約者に交付した上で説明することが、法律で義務付けられています。また、この書面を取り交わさないと、定期借家契約の効力は発生しません。
契約者にとって不都合なことはあまりないですが、法律に沿った正しい方法で契約しない不動産会社は避けるようにしましょう。
4. まとめ
定期借家契約について解説してきましたが、いかがでしょうか。
定期借家契約は、契約期間を限定した更新することができない契約形態です。
どちらかというとオーナーにメリットが多いですが、契約者にとっては下記のようなメリットがあります。
人によって受けられるメリットは変わってきますが、契約者にとっては費用面のメリットが多いです。
また、一般的な物件を借りることができない人でも物件を借りやすいので、水商売や高齢者の方は定期借家契約の物件がおすすめです。
ただし、契約するときは必ず下記の点を確認し、問題ないと納得した上で契約するようにしましょう。
この記事を読んだことで、あなたが定期借家契約で悩まずに物件を借りれることを心から願っています。
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