賃貸契約の保証人は印鑑証明が必要?悪用を防ぐ為にやるべき3つのこと

「連帯保証人の印鑑証明は必要?」「いつまでに用意しないといけないの?」など、賃貸の印鑑証明について気になっていませんか?

一般的に、連帯保証人の印鑑証明は必ず必要で、契約する日までに用意しないと鍵を受け取れない恐れがあります。

このページでは、長年不動産仲介の営業として働いてきた筆者が、下記の流れで賃貸の印鑑証明について解説していきます。

この記事をすべて読めば、印鑑証明が必要な理由から取得する方法や注意点までわかるので、失敗なく物件を借りることができます。

1. 連帯保証人の印鑑証明が必要なたった1つの理由

冒頭でも伝えた通り、連帯保証人の印鑑証明は必ず必要で、求められる理由は「なりすまし契約」を防ぐためです。

というのも、印鑑証明は実印を証明する書類です。仮に印鑑証明が不要だと市販されている適当な印鑑を実印と主張することで契約ができてしまいます。

こうならないために、連帯保証人が契約に同意している証拠として、本人でないと簡単には発行できない印鑑証明を求められるのです。

この章では、そもそも連帯保証人がどんな役割なのか解説していきます。

1-1. 連帯保証人の役割と責任とは

連帯保証人は契約者が家賃を滞納したり、退去後の清掃費用を払わないときなど、契約者と連帯して責任をとる役割があります。

連帯責任ということから、契約者が支払うべき状況だとしても、連帯保証人は請求された時点で支払いに応じなければいけません。

この点は法律で決められていることなので、どんな理由であろうと支払いに応じる必要があります。

1-2. 連帯保証人が支払いを命じられる平均値

国土交通省の調査によると、連帯保証人が支払いを命じられた平均値は「家賃13.2ヶ月分」です。

家賃が高くなるほど負担額も大きくなるので、連帯保証人をお願いするとき・されるときは慎重に検討しましょう。

ちなみに、支払いを命じられた最高値は「家賃33ヶ月分」なので、非常に高額な請求となるケースもあります。

1-3. 民法改正で極度額の取り決めが必須になった

2020年4月の民法改正で、”個人”の連帯保証人が負担する極度額の取り決めが必須になりました。(極度額=支払う限度額)

極度額は契約によりバラバラですが、「家賃24ヶ月分」の金額で定められることが多いです。

そのため、連帯保証人を求められたときは負担する極度額を不動産会社に確認した上で、改めて検討しましょう。

次の章で、印鑑証明を提出するときに知っておくべきことを解説します。

2. 印鑑証明について知っておくべき4つのこと

賃貸契約で印鑑証明を求められたときに知っておきべきことは下記の4つです。

不動産会社によって対応は異なりますが、一般的なルールとしてそれぞれ解説していきます。

2-1. 基本的に契約者の印鑑証明は不要

印鑑証明を用意するのは連帯保証人だけなので、基本的に契約者の印鑑証明は不要です。

ただ、高級物件や入居者管理に厳しい不動産会社だと、契約者も実印での契約を求められるケースがあり、実印と証明するために印鑑証明が必要になります。

このとき、実印での契約を拒む人もいますが、不動産会社からすると「何か後ろめたいことがあるのでは?」と疑われる可能性があります。

提出に応じないと契約はできない

契約者の印鑑証明を求められている場合は、どんな理由であろうと提出しない限り契約できません。

このとき、「悪用されるかも…」と不安を抱く人もいるかと思いますが、きちんと対策した上で印鑑証明を提出すれば心配ありません。

詳しくは4章「印鑑証明の悪用を防ぐためにやるべきこと」で詳しく解説します。

2-2. 3ヶ月以内に発行した原本を用意する

印鑑証明は不動産会社で契約する日から「3ヶ月以内」に発行されたものでないと受理してくれません。

また、記載されている内容が同じでもコピーはNGです。必ず原本を用意してください。

このとき、「コピーってすぐにわかるの?」と思うかもしれませんが、印鑑証明は特殊な紙で出来ていてコピーすると紙に「COPY」と表示されるのですぐにわかります。

2-3. 契約する日までに用意する

印鑑証明は不動産会社で契約する日に提出するので、必ず契約日までに用意しましょう。

多くの場合、印鑑証明などの必要書類が全て揃わないと鍵を受け取ることはできないので注意してください。

なので、申し込むときなど連帯保証人を依頼する際に「契約するとき印鑑証明が必要だから準備しておいてほしい」と伝えるようにしましょう。

2-4. 間に合わないときは事前に相談する

契約する日までに印鑑証明が間に合わないときは、正直に事情を説明して提出期限を延ばしてもらいましょう。

不動産会社によって対応は異なりますが、場合によっては覚書を交わして提出期限を取り決めるケースもあります。

どちらにせよ、本人が役所に行けばすぐに取得できるので早急に対応しましょう。

次の章で、印鑑証明を取得する方法を詳しく解説します。

3. 印鑑証明を取得・登録する方法

登録済みの印鑑証明は下記3つの方法で取得できるため、忙しい人や遠方に住んでいる人でも問題なく取得できます。

そして、印鑑証明を登録したことがない人は、下記3つの中から当てはまる項目を確認してください。

3-1. 役所の窓口で取得する

最もポピュラーなのが、今住んでいる役所の窓口で印鑑証明を取得する方法です。

後述する必要なものを提示すれば発行できますが、役所の混み具合により取得するのに時間がかかるデメリットがあります。

ただ、役所内に証明書自動交付機があれば2~3分で取得することもできます。

夜間・休日窓口も利用できる

平日の日中に役所へ行けない人は、夜間・休日窓口で取得しましょう。

平日の夜間と休日に証明交付窓口が空いている役所があるので、各役所のHPから営業時間を調べてみましょう。

窓口で必要なもの

窓口で印鑑証明を取得するときは、下記の2点を必ず持っていきましょう

  • 印鑑登録証(印鑑登録カード)
  • 運転免許証や保険証などの身分証明書

そして、印鑑証明を取得するときの手数料は「300円程度」です。

3-2. 代理人に取得してもらう

役所に行く時間がない人は代理人に取得してもらいましょう。

代理人が申請するときは、登録者の「印鑑登録証」を持っていけば取得することができます。

ただし、代理人が登録者の「氏名・住所・生年月日」を正確に記入できないと発行してもらえないので注意しましょう。

3-3. コンビニなどで取得する

顔写真が付いたマイナンバーカードを持っている人は、コンビニやドラッグストアのマルチコピー機で印鑑証明を取得できます。

ただし、市区町村によっては未対応なケースもあるので、事前に各自治体のHPをチェックしましょう。

登録済みの人で印鑑証明の所得方法がわかったら、続けて4章「印鑑証明の悪用を防ぐためにやるべきこと」を確認してください。

3-4. 本人が窓口に行ける・顔写真付の身分証を持っている

印鑑登録をしたい本人が役所の窓口に行くことができて、顔写真付の身分証を持っていればすぐに登録できます。

役所に行くときは下記のものを忘れずに持っていきましょう。

  • 登録する印鑑
  • 本人の顔写真付き身分証(免許証・パスポート・住民基本台帳カードなど)

3-5. 本人が窓口に行ける・顔写真付の身分証を持っていない

印鑑登録をしたい本人が役所の窓口に行けるものの、顔写真付の身分証を持っていない場合、家族などに保証人となってもらうことで登録できます。

その際は保証人の実印を申請書に押印する必要があるので、保証人と一緒に役所へ行くことが望ましいです。

仮に一緒に行けない場合は役所に確認した上で、役所のHPから申請書を印刷して、事前に押印した申請書と下記のものを持っていきましょう。

  • 登録する印鑑
  • 本人の保険証・共済組合証・国民年金手帳・厚生年金手帳のいずれか2点
  • 保証人の印鑑証明(別の市区町村で印鑑登録をしている場合に限る)

保証人がいない場合

保証人がいない場合は役所に計2回行くことになるので、その日のうちに登録することはできません。

まずは役所で申請書を提出することで、後日役所から自宅に「照会書(回答書)」が送られてきます。

その照会書に必要事項を記入し、再度役所に行って下記のものを提出すれば登録完了となります。

  • 登録する印鑑
  • 本人の保険証・共済組合証・国民年金手帳・厚生年金手帳のいずれか2点

3-6. 本人が窓口に行けない

本人が役所に行けない場合は代理人が登録することもできますが、役所に計2回行くことになるので、その日のうちに登録することはできません。

まずは役所のHPから委任状を印刷して、作成した委任状を代理人に提出してもらうことで、後日役所から自宅に「照会書(回答書)」が送られてきます。

その照会書に必要事項を記入し、再度代理人に役所に行ってもらい、下記のものを提出すれば登録完了となります。

  • 登録する印鑑
  • 本人の保険証・共済組合証・国民年金手帳・厚生年金手帳のいずれか2点
  • 代理人の認印
  • 代理人の顔写真付き身分証(免許証・パスポート・住民基本台帳カードなど)

また、代理人申請の場合、各役所によって必要なものが異なるケースがあるので、事前に確認してから対応するようにしてください。

Q. 登録する印鑑は何でもいいの?

登録する印鑑は何でもいいわけではありません。

登録する印鑑にはさまざまな規定がありますが、大前提としてインクが本体に内蔵されたシャチハタ印やゴム印はNGです。

必ず朱肉につけて押印するタイプの印鑑を用意してください。

印鑑の種類を表したイメージ

引用:楽天市場

また、角が欠けていたり、氏名以外のイラストなどが入っている印鑑もNGなので注意しましょう。

次の章で、印鑑証明の悪用を防ぐ方法を詳しく解説します。

4. 印鑑証明の悪用を防ぐためにやるべき3つのこと

印鑑証明を提出したことで悪用される可能性は限りなく低いですが、公的な重要書類なので下記3つの方法で悪用を防ぎましょう。

  • 印鑑証明の有効性を明記する
  • 契約書と重ねて割印を押す
  • 新たな印鑑で登録しなおす

どのように対処すべきか詳しく解説していきます。

4-1. 印鑑証明の有効性を明記する

提出する印鑑証明の備考欄に、「●●マンション●●号室の賃貸契約に限り有効」のように明記しておけば、悪用されることを防げます。

印鑑証明のイメージ

印鑑証明は不動産会社が保管するしておくものなので、上記のように明記しても何ら問題ありません。

万が一にも明記することを拒まれるようなことがあったら、理由を確認した上で信用できなければ契約しない方がいいでしょう。

4-2. 契約書と重ねて割印を押す

契約書と印鑑証明を重ねて割印を押すことで悪用を防ぐことができます。

印鑑証明書の割印を押すイメージ

ただ、割印を押す位置などに指定があるかもしれないので、割印を押すときは不動産会社に確認した上で行いましょう。

4-3. 新たな印鑑で登録しなおす

賃貸契約が完了したあと、役所で登録抹消の手続きをした上で新たな印鑑で登録しなおせば、提出した印鑑証明は効力を失います。

手間はかかりますが、心配な人はこの方法で悪用を防ぎましょう。

次の章で、印鑑証明の他に必要な書類について解説するので、漏れがないようにチェックしておきましょう。

5. 印鑑証明の他に必要な書類ともの

賃貸を契約するときは、印鑑証明の他に下記の書類とものが必要になるケースがあります。

物件によっては契約する日の数日前に求められることもあるので、事前に把握・準備しておきましょう。

5-1. 鮮明な身分証の写し

申し込むときに身分証を提出しますが、それとは別に鮮明な身分証の写しを求められるケースがあります。

多くの場合、不動産会社でコピーを取ってもらえるので、契約するときは顔写真付きの身分証を持参しましょう。

また、顔写真付きの身分証を持っていない人は、「保険証+顔写真」を一緒に提出しましょう。

物件によっては保険証だけでいいこともあるので、契約前に「顔写真は必要か」不動産会社に確認しておくことが望ましいです。

5-2. 収入を証明する書類

物件によっては申し込むときに提出するケースもありますが、その場合でも契約時に下記の書類を求められることがあります。

収入を証明する書類①|源泉徴収票

源泉徴収票は1年間の収入額が記されたもので、会社から年末の前後にもらえる書類です。

手元にない場合は会社の担当部署に依頼して発行してもらいましょう。

以下は源泉徴収票のイメージ画像です。

源泉徴収票のイメージ

サラリーマンやアルバイトの人は源泉徴収票で問題ないですが、自営業やフリーランスの人は「確定申告書」もしくは「課税証明書」を用意しましょう。

収入を証明する書類②|給与明細3ヶ月分

就職や転職をして1年経たない人で源泉徴収票がない場合は、給与明細3ヶ月分で代用できます。

仮に給与明細が手元にないときは、毎月振り込まれた給与額が記帳された通帳のコピーを提出しましょう。

普段から通帳記帳していない場合でも、銀行ATMに通帳を入れるだけで簡単に記帳できます。

5-3. 銀行で登録した印鑑

家賃が「口座引落とし」の契約だと、銀行で登録した印鑑が必要です。

家賃支払いが「銀行振込」のときは不要ですが、払い忘れを防げる引落としの契約が圧倒的に多いので、事前に用意しておきましょう。

また、銀行で登録した印鑑がどれかわからないときは、候補となる印鑑をすべて持参して銀行窓口で調べてもらいましょう。

契約書に押印する印鑑も必要

契約書に押印する印鑑も必要ですが、上記の銀行で登録した印鑑と一緒でも平気です。

ただ、契約者の印鑑証明が必要な場合は実印が必要となるので注意しましょう。

また、インクが本体に内蔵されたシャチハタ印はNGなので、朱肉につけて押印するタイプの印鑑を用意してください。

印鑑の種類を表したイメージ

引用:楽天市場

以上の書類とものが賃貸契約で求められるケースが多いので、事前に確認して必要なら早い段階から用意しておきましょう。

6. まとめ

賃貸の印鑑証明のついて解説してきましたが、いかがでしたか。

賃貸契約で印鑑証明を求められる理由は「なりすまし契約」を防ぐためです。

一般的には連帯保証人が用意するものですが、不動産会社によっては契約者の印鑑証明も必要なケースがあるので注意しましょう。

また、契約する日までに3ヶ月以内に発行した原本を用意する必要があるので、余裕を持って準備してください。

あなたがこの記事を読んだことで、印鑑証明で悩まず無事に契約できることを心から願っています。

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